会期 2025年3月15日〜3月23 日
場所 ギャラリー・オルガン
「住宅の骨格」展覧会テキスト
古い民家を再生してまで手に入れようとしている人がいます。多くの手間、費用、時間がかかり、相当なエネルギーと強い意志が必要と思います。それでも手に入れたい。それだけ民家は建物として、住居として大きな魅力があるのでしょう。民家と縁の薄い現代の住宅を設計している私も、その魅力に取り憑かれています。よく民家を見に行きます。旅先でも民家園があると聞けば、巡礼者のごとく行くことになります。
民家を訪ねるとまず、大地と一体になり大きく美しい屋根を持つ姿に心打たれ、一歩、建物の中に入ると何か大きなものに包まれ、守られているように感じます。大変居心地がよい。それがなぜかわかりたくて民家に通い始めました。
通ううちに、心地の良さが木のぬくもりとか煤けた匂いというものではなく、家を包むその骨格ではないかと思うようになりました。その骨格が生活を支え、包み込んでいる。特に骨格の存在を強く感じた民家は単純明快な小屋組で、平面も同様に単純なものでした。構造的に明快な大きな建築はたくさんありますが、民家という小さな建物が人の住まいであるということで、一層、骨格の存在に意味があると思いました。そして、生活と建物を包括した建築の骨格の存在が建築の役割であり、建築の居場所だと考えるようになりました。
普段の設計は、敷地条件、建築の法的条件、現実的なコスト、クライアントの希望や夢をもとに設計することになります。それらのたくさんの事と暮らしを考え、その家にふさわしい建築、ひとつの骨格があるのではないかと思い、住宅をつくり続けました。
今回の建築展は、「住宅の骨格」を意識しはじめた頃から現在までの約20軒の展示になります。「住宅の骨格」は建物の内側から始まりました。次第に周辺環境、社会環境など建物の外側に意識が広がり、現在は自然環境まで考える建築になりました。その様子を身近に感じていただけたらと思います。